たどりつくまでに思った以上に時間をとられた。
体力が落ちてきているのを痛いほど感じる、やはり限界が近づいてきているのだろうか。
苦笑しながら裏路地をかけていると、少し先の建物で物音が聞こえた。
耳を澄まさないと聞こえないような音だが、神経を研げば聞こえない音ではない。

ファルマン、バリー、ハボック、あとは上にホークアイか。
全部を守りきれるだろうか、物陰に潜んで冷静に状況を把握していた。
敵の数は、2,いや3か?
ドゴォォォン
轟音と共に、室内から雪崩れるようにファルマンとバリーが出てくる。
あの全身黒ずくめなのはハボックだろう。
少し不利だなと、そう判断したは戦闘態勢に入る。
その時丁度、ハボックの銃が詰まったらしい、そんな顔をしている彼を蹴り飛ばす。
突然湧いて出てきた人物に蹴り飛ばされたハボックは反射的に攻撃をしかけそうになって止まった。
「早く、」
銃をどうにかしてくれとはそう背後に投げかける。
殺してはいけないのだろうと思い、腐敗臭ただよう目の前の敵の注意をひきつける。
「すまない。」
「油断するな、まだ居る。」
目の前にいるのはなのだが、普段と雰囲気も違えば口調も違う。
ハボックは、上官の顔をする彼女にハッと一言で従い、はその場を後にする。
エンヴィーと遣り合っているその人間を見て、首を傾げた。
この国の人間ではないなと思う。
間に割って入るようにして、その戦いを止めた。
「お前、敵カ?」
「いや、それは違うけど。」
振り返って人に扮したエンヴィーを一瞥する。
彼は、押されていた。
何故かこの目の前の人物はエンヴィーがわかるらしい。
「何をしているの?」
「さぁ?」
エンヴィーにそう問うも、適当にはぐらかされたなと薄く笑ったその瞬間、
やっと気づく。
いつの間にか、グラトニーが高台の上に居る。
まずい。
「気づいた?でも、遅いよ。」
エンヴィーが、首を切る真似をした。
ホークアイが、あそこには居るはずで…。
「行ケ」
「ごめんなさい、頼みますね。」
駆け出す脚では間に合わない、躊躇う気持ちを抑えて妖力開放をした。
守ると、そう約束したから。
かなり距離のあるその道を一瞬で辿り着くには、両足をかなり瀬戸際まで開放してしまう。
タッと飛んで着地したその場にあるのは、
高く首を絞められ持ち上げられたホークアイ。
「・・・・・・?」
あまり調子の良い状態ではないのに、許容範囲を僅かに超えた妖力を開放した私の代償は、
ぴきりぴきりと、血管の浮き出た額に裂け始めた目尻、両足にはキメラのような不気味な形の羽のようなものがついていて、
完全に怯えきっていたのはグラトニー。
「離しなさい。」
素直にそんな言葉に従うグラトニーへ、今すぐ立ち去れと命令する。
そこへ駆け込んできたのは、ホークアイの身を案じて飛び込んできたロイ。
飛び去るグラトニーと入れ替わってフュリーも姿を現して、佇むの人間でない姿を見て愕然としていた。
わかってはいたけれど、正直そんな瞳で見られると、
やっぱり笑うしかなかった。
「人間じゃないから、仕方ないでしょう?」
笑いながらそう言う彼女に、そんな事実を初めて知らされたロイ以外には動揺がはしる。
しかし、今は私に時間をとっている場合ではないと判断して口をひらく。
「追わなくていいの?」
「あ。あぁ…」
曖昧なそんな返事をしつつ、冷静さを徐々に取り戻した彼らは撤退作業を始める。
流石、デキる集団だなと横目でそれを眺めながら、物陰に隠れた。
戻そうと思うのに、いつもより時間がかかるみたいで。
これ以上、無様な姿を晒したくなくて。
「」
てきぱきと片づけをしていたフュリーが、不意に口を開いた。
ロイとホークアイは先に行ってしまった。後から追いつけと、彼らは言っていた。
それが優しさなのか、はたまた気持ち悪いから一緒にいるなと言っているのか、
前者だとわかっているのにどうも疑う自分が嫌になる。
「怒ってます。」
「へ?」
突然の怒ってます宣言に、は肩透かしをくらったような変な声を上げた。
「何で、何も言ってくれなかったんですか。」
「・・・、すごい感想ね。」
フュリーは驚きこそしたものの、今更何も恐れることはないと言う。
だってそれも、でしょう?
そういわれているようで、笑ってしまった。
「だって、仲間でしょう?」
また、笑ってしまった。
今度は、嬉しくて。
「ごめんなさい。」
じゃぁ、行ってくるね。僅かにまだ開放している両脚で跳躍して、路地を駆け抜ける。
気分はよかった、不思議と。
タンッタンッタン、そうリズムよく跳躍して辿り着いた先はやはり、第三研究所。
ざざ、と冷たい風が靡く。頬に銀灰の髪の毛が当たり、冷たさが痛い。
中から人々が出てくるのは、ロイがそう誘導したかららしい。
過ぎ行く人々が口々にそんなことを言っていた。
『手配中の殺人犯が紛れ込んだ、ただちに撤退しろ』と叫んで中に入っていった大佐がいると。
「援軍の国家錬金術師だ。早く、逃げなさい。」
まだ手になじまないその銀時計を初めて人前に翳し、私は研究室へと踏み込んだ。
守りきれる、そう確信して。
それが過信だなんて、全く気づかずに。
アトガキ
どうしたいのか、わかりません。