とうとう感付いてしまったか、何度目になるかもわからない溜息を吐いてどんよりと曇った空を見上げた。

 

大総統がホムンクルスかもしれない、そんな物騒な会話を尻目には再び息を吐く。

 

ねずみ色をした空が、これからの未来のように感じて首を横にブンブンと振ることしか今の私にはできなかったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、リンだっけ?」

「お前が、だナ。」

 

最悪な現場に出くわしてしまったものだとは溜息を吐く。

偶然彼らに居合わしたのが、大総統がホムンクルスだという話をしている最中。

驚いた顔もしない私に「知っていたのか?」と聞かれたけれど、それは私からしてみればご飯って一日何回食べる?レベルの問いかけ。

そうね、3回よ。そんな程度の返答なのだ。

 

 

「無駄な情報を与えてくれたわね。」

「無駄だと?」

「そうよ、知らなくてもいいことだってあるでしょ…」

 

複雑なニュアンスを含むその物言いに、訝しげにリンは視線を向けた。

あなたにも守るものってあるんでしょう?はそう続ける。

ああ、と合点がいったようにリンは頬を緩ませた。

 

「それより、なんでアレがここにいるの?」

 

二人で話をいつまでもしていられるほどのスペースも時間の余裕もなさそうに感じて私は皆の前に出る。

指を差す先にはワイヤーでぐるぐると巻かれたグラトニーがほおリ投げられていて、ぶつぶつと何か言っているようだった。

 

 

「ああ、よかったここがわかったか?」

「もっとわかりやすい暗号残してください、苦労しました。」

 

突然道行く人にばっと一枚の紙を渡され、ロイの筆跡で数字や記号やアルファベットがばらばらに書き連ねられていた。

何これ、とたずねようにも人ごみのなか誰に渡されたかも定かではない上なにやら緊迫感すら感じたのだ。

必死に解読してもなかなか答えが導き出せず、裏路地で考えようと裏道を歩きながら考えていると猛スピードで走り去るホークアイの車を見つけたというわけで。

 

まぁいいかえれば、見つけたのは答えではなくホークアイだったりする。

追ってきてみればこの状況だった。

 

 

 

「っと・・・これは久しい顔だなおい。」

「ノックスじゃないか、何?どうしたのこんな所で。」

 

神妙なかおつきだったが一気にぱっと明るい表情を浮かべたことに一同は唖然とする。

だってその相手がノックスだったから、そして彼とも知り合いだという彼女の顔の広さには脱帽してしまう。

 

「いや、それどころじゃねぇ。このお嬢ちゃんもたいしたタマだぜ、無茶をする。」

「・・・っ、ランファン!!」

 

よく見れば彼の両手には針と糸、そして周りにはアルコールやメスなどが散らばっていた。

その前には血だらけでも必死にハハと笑うランファンが寝ている。

カっと一気に血が上るのがわかった、伏しているランファンに詰め寄りは問いただす。

 

 

「何があった?誰だ?」

、やめろ傷にさわる。」

「うるさいノックス、誰がやったんだ?」

 

カツリカツリ、と背後から足音をたててきた人物にはぐいっと引っ張られる。

バランスを崩した体をそっと抱きとめて、耳元で聞こえた言葉に力を抜いた。

君のせいじゃない。と、やんわりと言われただけでもそれだけで多少は救われた気がするのは小さな気休めかもしれないけれど。

 

「ごめん。で、誰が?」

「キング・ブラットレイだ。」

 

ぶぁっと湧いた憤怒の感情も、彼の名前を聞いて少し消沈してしまった。

今ここで彼を殺すことも可能ではあるけれど、もっともっと違うところに原因は潜んでいる。

背後は、もっともっと大きいのだ。

そして彼も利用されている一人にすぎないと、私は彼らの近くに居た時感じ取っていたから。

 

 

「まずはグラトニーから情報を聞き出す。」

「バカだから無理かもよ。」

「もし取り出せるのなら賢者の石も頂こう。私の部下の治療に使えるかもしれない。」

「そんな簡単にはいかないわあの石は。」

 

「・・・何をそこまで危惧しているんだは?」

 

何をって、きっと大人しく彼らがしているなんて思えない。

いち早くこのグラトニーを置いて逃げるか、あるいは彼が化け物を目覚めさせる前に殺し続けるか。

急に押し黙ってしまったは、何も言わずに見張りをしているホークアイの元へ向かおうと脚を向ける。

 

「もう俺にぁついていけねー、帰らせてもらうぞマスタングさんよー。」

 

ノックスも降参だといわんばかりの気だるそうな表情で外へと向かう仕度をしはじめる。

そんな中でグラトニーの漏らした小さな声を聞き取れたのは、どうやらだけだったようだ。

こんな時ばかりは人知をはるかに超えた聴力に感謝したいもの。

 

 

「マスタング・・・ラストころした・・・マスタングたいさ・・・」

 

まるで事実を口に出して再確認しているようなそれ、そしてぞわりとした感覚。

 

 

 

 

 

 

 

ああ、化け物のお目覚めだ。

 

 

 

 

 

「伏せろっ!!!!」

 

退路から素早くターンをしつつ床を蹴るの怒号に反射的に反応した彼らは床に体を這わす。

それとほぼ同時だっただろうか・・・

 

 

ドゴォオオオオン・・・

 

 

空家であったことを心底感謝する、家の半分が崩壊、いや、

全てをどうやらグラトニーは飲み込んでしまったようだった。

 

 

 

「落ち着けグラトニー。」

「マスタング・・・ラストころした・・・」

 

元々自我というものが皆無に等しいグラトニーに言葉をきけというのも無理なのだけれど、

殺す以外に彼を落ち着かせる方法を思いつきはしない。

しかしそれは彼を捕獲していたエドたちに損失を与えるかもしれないと思うと迂闊に手も出せないのだ。

 

 

「挑発するな中尉!狙いは私だっ」

 

振り返るとこちらへ銃口を向けているホークアイと目があった。

ロイはそんな彼女を制してはいるけれど、あの脇腹という爆弾をかかえている彼自身はむしろホークアイよりお荷物といっても過言ではない。

 

そんなことを考えていると、ロイが手袋をはめているのが視界に入る。

まぁどちらにしよ狙いはロイに変わりないのだろうから、守りやすいといえば守りやすい。

 

 

「おいっ、せっかく捕まえたのに殺すのか?」

「生き残ることが最優先だろう。」

 

ぱちりと指をひとつ鳴らしてエドの静止などお構い無しに容赦の無い焔があがる。

ロイの錬金術を含めた強さは人間のなかではかなりのレベルだ、が相手は人間ではない。

 

 

「「なにいぃぃぃ!!!」」

 

ロイとエドの若干間抜けな驚きと同時、またもやグラトニーは先ほどのみこんだ焔と同じように彼らのいた場所をまるまるとりこんでしまう。

飛び去るように逃げたロイとエド、そしてアルは同じ方向に逃げながらなにやら「こっちへくるな」とかもめていて…、

 

暢気だなとは苦笑した。

 

きっと彼らなら死ぬこともないだろう、いくらグラトニーがあの状態だからといってロイもエドもアルも、そしてホークアイも居るのだ。

その場は彼らに任せることにして、一番高く聳え立っていそうな一本の樹木にトンと飛び乗る。

 

 

 

「あ、いた。」

 

ぱかりぱかりと走る漆黒の馬を見つけた、けれどそれは明らかに変化しているエンヴィーだ。

その馬が真下を通過するころを見計らって重力に任せて飛び降りる。

 

そう、飛び降りるのだ。

 

 

 

 

ズシャァァアアアアアア・・・・・・・

 

「っ・・・ちょっと悪ふざけもいいかげんにしてくれないかな!!・・・って?!」

 

落下したと完全に接触事故を起こしたのは全速力で走る馬。

人間の形をしているは結構な勢いで吹き飛び地面にたたきつけられていた。

 

「バカでしょちょっと!もっとよく回り見ろよおいっ、っ!っ!」

 

全く応答のないは頭を強く打っているらしく、脳震盪だろうか意識を失っていた。

そして敵といっても過言ではない彼女が目の前で自分のせいとはいえ自身の不注意で倒れてしまったことに焦りさえ感じるエンヴィー。

一突きすれば殺す事だって可能かもしれないのに、そんなことは脳裏にかすりもしなかった。

 

 

「だぁああ、なんでぼくが面倒みないといけないんだよっ。」

 

数秒考えこんだかと思うと諦めたように彼女を背中に乗せて、再び馬は走り出す。

何度も何度も溜息を吐くエンヴィーは、走り去ろうとする車を見つけて目の前に飛び出した。

慌ててブレーキを踏んだ車に向けて、背中のをひょいと投げ飛ばして何事もなかったかのようにグラトニーのもとへと行くことにした。

 

あの車に彼らを手引きしていた人間に見覚えがあったけれど、そこはあえて見てみぬふりを。

甘いな、には…、そう思わざるをえずにエンヴィーは苦笑したのだった。

 

 

 

「・・・?」

 

突然目の前に馬が飛び出してきて、その背中には見覚えのある女。

意識のないと思われる彼女をひょいと投げてよこした馬は、あっという間にどこかへと消えてしまったのだ。

とりあえず車外へ出てぐったりとして動かないを抱きかかえて車内へ戻るホークアイ。

 

「こりゃ、ただの脳震盪だな。」

 

ちらっとそんなを見てしれっといってのけたノックスの言葉に肩を撫で下ろして、再び車は走り出した。

ホークアイはあまり顔色のよくないランファンにつきっきりだったので、自然とロイがの側にいることとなる。

それも、車内は既に満席だったので折り重なるように、抱きかかえて座っていた。

 

「何をしていたんだろうな。」

「・・・まぁこういう奴だから、単騎掛けってもんが大好きなんだよ。」

「単騎掛け?」

 

ロイがぽつりと呟き、旧知の仲のノックスが曖昧に濁す。

それをすかさず拾うホークアイ。

 

 

「あまり口出しも手出しもしたくはないが、こいつはできるだけ周りが傷つかないようにっていうことだけで動くからな、気をつけてやってくれ。」

 

危険なんて顧みないんだよ、は。

そういうノックスはまるで父親のようにを見る。

彼らの間に何があったのかまでは定かではないけれど、彼もまたへ信頼を置いているのだろう。

 

 

「それにしてもあの馬は…」

「ホムンクルスだな。」

 

謎は謎を呼ぶばかりで、考えても意識の戻らないに聞かない限りわからない。

いや、意識が戻ったとしても彼女が口をわるかさえ定かではなかった。

 

 

 

 

 

 

アトガキ

漫画を持っていない私には書ける限界があるなぁ…、どなたかストーリー教えてください。笑

借り物の漫画で書くのには限界が見えてきた、けどロイへの愛で書き続けます。